アーメン あーめん
日常語になった神学
原語
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ヘブライ語 אָמֵן
amen
確かに・そのとおり
語根 '-m-n(支える・しっかりしている)から。同じ語根から emet(まこと)、emunah(信頼)が出る
アーメンは「確かに」「そのとおり」という意味のヘブライ語です。祈りの終わりを知らせる合図ではなく、誰かの言葉に「同意します」と返す返事でした。翻訳されずに、音のまま世界中に残った珍しい語です。
もともとは、返事の言葉
ヘブライ語の語根 '-m-n は「支える・しっかりしている」。ここから「まこと」を意味する emet、「信頼」を意味する emunah が出ます。つまりアーメンは、気持ちの高まりを表す語ではありません。「これは確かだ」という判断を表す語です。
使い方は、はっきり「返事」でした。申命記27章15-26節では、呪いの言葉が一つずつ読み上げられ、そのたびに民全員が「アーメン」と答えます。ネヘミヤ記8章6節でも、エズラの祝福に民が「アーメン、アーメン」と答える。誰かが言ったことを受けて返す言葉であって、自分の祈りを締める言葉ではありませんでした。
新約聖書でも形は同じです。コリントの信徒への手紙一14章16節で、パウロはこう書きます——聞いている人が意味を分からなければ、あなたの感謝に「アーメン」と言えないだろう。裏を返せば、アーメンは内容が分かって初めて言えるもの、ということになります。さらにヨハネの黙示録3章14節では、この語がそのまま呼び名として使われます——「アーメンである方」。返事の言葉が、確かさそのものの名になった形です。コリントの信徒への手紙二1章20節にも、神の約束はキリストにおいて「アーメン」となる、という言い方が出てきます。
なぜ訳されなかったのか
翻訳の世界では珍しいことが起きています。ふつう翻訳は、意味の通じる語に置き換えます。ところがこの語は、ヘブライ語から新約聖書のギリシア語本文へ、そこからラテン語訳へ、さらに各国語の聖書へと、ずっと音のまま渡されました。なぜ訳されなかったのか、はっきりした説明は残っていません。結果として、言語の違う地域の人が、同じ音を口にする形になりました。宗教をまたいでも残っています。アラビア語にも同じ子音の語根があり、イスラームの礼拝では、クルアーンの開端章を読んだあとに「アーミーン」と言います。ユダヤ教、キリスト教、イスラーム。3つがそれぞれの祈りのなかで、ほぼ同じ音を使っていることになります。
意味の変遷
- 古代イスラエル 誰かの言葉を受けて「確かに」と返す返事。共同体が声を揃えて言う場面で使われる
- 1世紀 新約聖書のギリシア語本文でも、訳されずヘブライ語の音のまま残る。福音書のイエスは、話の先頭に置く使い方をする
- 4世紀末〜5世紀初め ラテン語訳でもそのまま。以後、ヨーロッパ各国語の聖書も音を写す形を引き継ぐ
- 現代 英語の "Amen to that." のように、宗教の外で強い同意を表す言い回しになる
今の使われ方と、そのズレ
英語での使われ方
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Amen to that.
「まったくそのとおり」。相手の発言への強い同意
ズレ 宗教の外に出た用法ですが、「人の言葉を受けて返す」という原義の形はそのまま残っています。祈りの締めくくりより、こちらのほうが原義に近いくらいです
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Can I get an amen?
「賛成の人?」と、その場に同意を求める言い方
ズレ 話し手ひとりへの返事ではなく、その場にいる人たち全員に向けた呼びかけです。人の言葉に同意して返す、という原義の型は残っていますが、誰が誰に向けて言うかは変わっています
日本語での使われ方
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祈りや讃美歌の最後の「アーメン」
締めくくりの言葉
ズレ 日本語では「終わりの合図」として覚えられがちですが、原語では、司式者の言葉に会衆が同意を返す言葉でした。誰か一人が言うより、みんなで言う語です
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手を合わせて「アーメン」(冗談めかして)
キリスト教らしさを表す記号。お手上げ、ご愁傷さま、といった含みで使うこともある
ズレ 「確かに、そのとおり」という意味はほとんど残っていません。音とジェスチャーだけが残り、中身が抜けた形です
よくある誤解
アーメンは「お祈り、終わり」の合図だ
直訳は「確かに」「そのとおり」。誰かの言葉に同意を返す返事です
申命記27章では、読み上げられる一つひとつに民が「アーメン」と答えます。コリントの信徒への手紙一14章16節でパウロは、意味が分からなければアーメンとは言えない、と書いています。分かって、納得して、返す。締めの合図なら、内容が分からなくても言えるはずです。
まとめ
- 直訳は「確かに・そのとおり」。語根は「支える・しっかりしている」で、まこと・信頼と同じ系統
- 自分の祈りを締める語ではなく、人の言葉に同意を返す語。集団で唱和する場面の言葉だった
- 翻訳されず音のまま各国語へ渡った珍しい語。ユダヤ教・キリスト教・イスラームがほぼ同じ音を使っている