原理主義 げんりしゅぎ
日常語になった神学
原語
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英語
fundamentalism
「根本のことがら」を守る立場
fundamental(土台の)+ -ism(〜主義)。1920年のアメリカで作られた新しい語
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ラテン語 fundamentum
fundamentum
土台・基礎
fundus(底)から。もとは建物の基礎を指す語
「原理主義」は、もともと自称でした。1920年のアメリカで、聖書の記述を譲らずに受け取る立場のプロテスタントが、自分たちをそう名乗ったのが始まりです。「過激派」という含みは、あとから付きました。
何が「根本」だったのか
発端は『The Fundamentals(根本の諸真理)』という叢書です。1910年から1915年にかけて全12巻・約90本の論考が出ました。資金を出したのは石油会社ユニオン・オイルの創業者ライマン・スチュアートら。300万部以上が牧師や神学生に配られています。
背景にあったのは、19世紀のあいだにヨーロッパから入ってきた読み方です。聖書をいつ・誰が・何のために書いたのかという史料として扱う手つきと、進化論。これに対して、聖書の記述は歴史としても正しいのだ、と主張する側の運動が起きました。この叢書は、その主張を並べたものです。
fundamentalist という語が印刷物に出るのは1920年。バプテスト系の新聞『ウォッチマン・エグザミナー』の編集者カーティス・リー・ローズが、根本のことがらを手放さず、そのために戦おうとする人々、という意味で使いました。他人を名指しする言葉ではなく、自分たちの側を指す言葉として出発したのです。ここが、この語の歴史でいちばん反転している点です。
意味の変遷
- 1910〜15年 叢書『The Fundamentals』全12巻・約90本。300万部以上が配られる
- 1920年 カーティス・リー・ローズが fundamentalist という語を使う。自称として始まる
- 1925年 テネシー州のスコープス裁判。公立学校で進化論を教えることの是非が争われ、この対立が全国的な話題になる
- 1950年代 英語圏で、この語をキリスト教以外にも当てはめる用法が現れる。最初に当てはめられたのはムスリム同胞団だとされる
- 1979年前後 イラン革命を機に、報道で「イスラーム原理主義」という言い方が広く使われるようになる
今の使われ方と、そのズレ
今の使われ方
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彼は原理主義者だ
融通が利かず、原則を曲げない人
ズレ もとは自称で、中身は「聖書のどこを譲らないか」という読み方の立場でした。今は他人を評する言葉で、中身より態度を指します
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市場原理主義
市場に任せればうまくいく、という考えを強く押す立場
ズレ 宗教から完全に離れた比喩。例外を認めずに押し通す態度、という意味だけが残っています
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イスラーム原理主義
報道で使われる、ある種の政治的な運動の呼び名
ズレ 20世紀初めのアメリカのプロテスタント運動の自称を、別の宗教に当てはめたもの。当事者がその名で自称しているとは限りません
よくある誤解
原理主義とは、宗教にかぎらず「過激な人」のことだ
語が生まれたときの意味は、「聖書のどこを譲らないか」という読み方の立場でした
1920年の初出は自称です。攻撃のための呼び名ではありませんでした。「過激」という含みが付いたのは、他人がこの語を使いはじめてからです。自称が他称に変わるとき、語は評価を帯びます。カリスマが逆向きに動いたのと同じ構造が、こちらでは悪いほうに働いた形です。
まとめ
- 1910〜15年の叢書『The Fundamentals』が発端。1920年に fundamentalist という語が自称として生まれた
- 「過激派」という意味は後付け。他人が使う言葉になった時点で、評価語に変わった
- 1950年代以降、キリスト教以外にも当てはめられるようになったが、その当てはめ方には批判もある